グッドデザイン賞「オンアングル」誕生の軌跡

多種多様なスリッパを手掛け、時代のニーズに合ったさまざまな商品を世に出してきたニッポンスリッパ。そうした商品の数々はどのようにして生まれるのだろう?昨今の健康志向と「イエナカ」需要により、一躍脚光を浴びた機能性スリッパ「オンアングル」の企画担当者にお話を伺った。
2022年1月26日 公開

機能性スリッパ「オンアングル」 開発に至った経緯

スリッパやルームシューズの企画開発、OEMを担当して15年。スリッパ制作の第一線で活躍する企画開発部の長谷川真奈美さんはこう語る。
「以前、健康と美容をテーマにした女性ターゲットの商品を作ったことがあるんです。履くだけでストレッチできることを目的としたインパクトのあるスリッパだったのですが、厚底で正直履きづらくデザインもイマイチで…。その時の記憶は少し苦い思い出ですね。今回は市場動向も調べながら、女性のみならず運動不足や体重増加が気になるすべての方に向けてサポートしたいという思いから企画が生まれました」
ニッポンスリッパの主要ブランドの中でも「毎日の健康管理をサポートする」ことをテーマとしたfit-onシリーズに属する「オンアングル」。
ただ履き心地が快適なだけでなく、傾斜で負荷をかけ、履いて積極的に家事などをすることで、カロリー消費を促す効果が期待できる機能性スリッパだ。
新製品スリッパの企画打ち合わせの様子
健康志向の高い層を意識して作られた「オンアングル」

検証に次ぐ検証… 製品化までの苦労の日々

企画がスタートしたのは2019年。通常、スリッパの企画開発~製造販売までは半年サイクルで行われているが、オンアングルが発売されたのは2020年の2月。他の商品よりも長く、製品化までに1年ほど要したという。
「ターゲットは30~50代の男女。カロリー消費の効果を促すために、ソールにある程度の負荷をかける必要があるのですが、それでも歩きやすくなければ多くのスリッパの中から選んでいただくことができません。その絶妙なラインで制作するのが苦労した点であり、私が一番こだわったポイントでした」
試作品を何度も作りながら、1カ月かけて自ら履いて検証を行ったという長谷川さん。今回意識したのは、その他にもたくさんある。
「商品販売の際のフック掛けにもこだわりました。通常、スリッパの売場ではスペースの兼ね合いもあり、左右を交互に重ねて陳列されることも多いのですが、fit-onシリーズで統一した台紙を使って左右並べてディスプレイすることでお客様が見やすく、手に取っていただきやすいように工夫しているんです」
売場ではスペースを取ってしまうが、それでもそうした細かな気遣いこそが、ユーザーの心を掴む大切な要素なのだ。
「スリッパのパーツでは、ウレタンのようなE.V.A.底材をソールに使用したのもポイントです。価格は上がりますが、汚れがつきにくいのが特長です」

自信に繋がったグッドデザイン賞受賞

「オンアングル」というネーミングは、いくつか候補があった中から、「角度(ANGLE)の上(ON)にあるもの」という意味で長谷川さんが命名。
「O」と「A」を組み合わせたロゴデザインが先に浮かんだという。体重増加は男女共に気にする方が多いだろう、とターゲットは絞らず、メッシュ素材を使用してスポーティーなデザインを意識した。さまざまな思いが詰まった長谷川さんの自信作は、予想を超えた売上を記録※。「グッドデザイン賞」の受賞は、彼女にとって最高のご褒美だった。
「憧れだったグッドデザイン賞を受賞できたことに何より驚きましたし、今後の励みにもなる出来事でしたね」
自ら検証しながら心を込めて作り上げた「オンアングル」。その商品が評価されたことは、今までの苦労が吹き飛んだ瞬間でもあっただろう。
「オンアングルは、立ち仕事や家事をする方に履いていただき、室内でどんどん活用してほしいですね。ユーザーの声をもっと聞く機会があれば常に改良し、今後の企画にも活かしたいと思っていますし、リピーター需要も狙っていきたい。これからもしっかりとしたコンセプトを持って、世の中に受け入れられる商品、魅力ある商品を作っていきたいです」
最後に、心強い言葉で目標を語ってくれた長谷川さん。この先も、ユーザーがわくわくするスリッパを生み出してくれるに違いない。

※2020.1月~2021.10.11 出荷数48,167足