“名入れスリッパ”職人が継承する技術とこだわり

学校や施設などでよく見かける来客用スリッパ。ニッポンスリッパには、このようなスリッパの名入れ作業を行う職人が在籍している。具体的な作業工程や印刷の種類から名入れスリッパ業界の実情まで、さまざまなお話を伺った。
2022年1月26日 公開

繁忙期には3万足の受注 そのすべてを手作業で行う

社屋の入口からすぐのところにある小さな工房。ここが、”名入れ職人”狩野さんの仕事場だ。元々職人だった父親の跡を継いで早12年。
現在は狩野さん一人で一足一足丁寧に名入れ作業を行っている。
「職人の数は全国的にも少なく、年齢層がだんだん上がってきていますね。名入れに必要な活字を作る業者も年々減っているんです」
時代の流れとともに機械化が進む今、こうした技術を持った職人の存在は貴重だ。
通常は年度末となる1~3月が繁忙期。クライアントは学校などの教育機関や寺社が多く、コロナ禍に至る前は多い時で年間10万足もの依頼があり、2~3月だけで3万足と受注が集中した時期もあったという。
名入れ作業を行う工房
箔押し印刷に使用する活字

名入れスリッパの印刷は「箔押し」と「シルク」の2種類

【箔押し印刷】
●特徴
・明朝体の文字フォントのみ反映可能。
・乾燥不要のため、早く多数の制作が可能。
●作業工程
① 反映する活字を型にセット。
② その型を名入れ機にセット。
③ スリッパを入れて印字する位置を微調整する。
④ 箔の色によって温度設定を変更する。
※金銀は125℃、白黒は低めの120℃が目安
⑤ 足元のペダルを踏みこんでスリッパに箔押しする。
⑥ 完成
【シルク印刷】
●特徴
.細かい文字やロゴデザインなどが反映可能。
.箔押しよりも長持ちする分、価格が高く
作成に時間がかかる。
●作業工程
① データを反映させた版をセット。
② スリッパを台に置き、位置を合わせる。
③ うすめ液を入れてインクを練る。
④ シルク版の中にインクを流し込む。
⑤ スキージーを使って塗りこみ、スリッパに印字させる。
⑥ 電球の熱を当てて乾かし、その後風で乾燥させる
※色や量にもよるが、金銀に比べて白黒は時間がかかる
⑦ 完成

職人技が試されるミリ単位の位置調整

熟練の技術を持つ狩野さんは、基本的に試し刷りはしないそうだが、神経を使うのが刷る前の細かな調整だという。
「同じ文字の大きさでも、その文字の形によって詰まって見えたり均等に見えなくなったりする場合もあるので、微調整が必要なんです」
細かい位置調整には気を遣う
文字の間隔が違うと見え方も異なる
クライアントが納得するまで確認し、内容が確定してから実作業へ。短期間に多くの受注があるとその都度各クライアントに確認するのは大変な作業だが、その工程がとても大事なのだという。また、印字させるのは決して平らではないスリッパ。一足にかかる制作時間はわずか数分だが、何千足ものスリッパを同じように仕上げるのは容易ではない。
「箔押しは足のペダルの踏み具合で箔の付き方が変わるので、均一に入れるのが難しいんです。そこは経験を積んでやりながら技術を身に付けました」
普段何気なく履いているスリッパだが、狩野さんの職人技は長年の経験の賜物だ。

職人としてのやりがいとこれからの“名入れ”の可能性

名入れスリッパの職人としてやりがいに感じることを伺うと、狩野さんは少しはにかみながら教えてくれた。
「コツコツ同じ工程をひたすら繰り返す仕事ですからね…。何だろうなぁ?前に依頼してくださった方からリピート注文が入るとやっぱり嬉しいですし、頑張ろう!というやりがいを感じますね」
納品は1足から可能で、追加発注も受け付けているとのこと。時には、記念品としてアーティストなどから特別に依頼を受けることもあるのだとか。
「精一杯きれいに仕上げますのでぜひご注文ください!箔押し印刷で対応している書体は明朝フォントのみですが、今後もしゴシックフォントなども対応できればバリエーションが広がると思いますし、好きな文字がスリッパだけでなくサンダルにも印字できたらさらに可能性が広がるかな、と考えたりすることもありますね」
いつかそんな希望も実現できたら…と語ってくれた狩野さん。スリッパには、そうした情熱溢れる職人の思いが込められている。

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